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PH4.4-7

French Women Don't Get Fat*

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正直に言おう。食べ物ブログにお邪魔すると、ワタシは嫉妬を覚える。



家族や友達のために料理するのは楽しいし、おいしいものを食べるのはもちろん好き。でもワタシは美食家ではないし、料理は別に得意ではない。食べ物に執着があるわけでもない。

しかし。食べ物ブログをやってる人たちの、食べ物に対する情熱と執念(と書くとなんだかスポ根ドラマみたいだが、英語でいうとpassion and obsessionで、ちょっとファッショナブルな響き)。おいしく作るだけじゃなく美しく盛り付けて、それをさらにため息のでるようなおしゃれな写真に仕上げる根性(ワタシだったら絶対待てない。すぐ食べたい。どっちにしても盛り付け下手だし)。夢のような宝石のような芸術品のようなお菓子を作って味わえることのできる技術と舌(不器用だし甘いものは苦手)。ここをこう変えたらどうなるだろうとかこの辺を改善したいとかここを工夫してみたいとか言う、根気と探究心(そんな向上心ワタシにはない)。

こういう性質をワタシも持ち合わせていたら、人生違ってただろうなあと思うのである。そして「食べる」「食べるものを作る」という作業を芸術レベルに持ち上げてしまう彼・彼女たちの情熱と愛情が、うらやましくなってしまうのである。

しかし、お洒落で人気者のクラスメートに嫉妬しながらも憧れるのとおんなじで、ワタシのお気に入りには嫉妬指数の高い食べ物ブログが沢山入っている。

お菓子の写真がいっぱい載っているサイトは、特にお邪魔するのが楽しみ。甘いものはあまり食べられないけれど、夢のような宝石のような芸術品のようなお菓子の写真を見るとわくわくうれしくなる。写真を見ながらお茶やコーヒーを飲んで、おいしい幸せを頂いたような気分に浸る。

デザート菓子を愛する人たちのお菓子に対する情熱と執念のレベルは、食べ物ブログをやってる人たちの中でも特に気合が入っているような気がする。日本のお菓子ブロガーさんたちは写真中心の人が多い(ような気がする)が、英語でやってるデザートブロガーさんのところは読み応えもたっぷり。こういう人たちが書くチョコレートの味やクリームのテクスチャーの描写は、ちょっときわどいロマンス小説にでも出てきそうな感じなのである。



フランスへの引越がほぼ本決まりになったとき、いつも形から入るワタシは本屋へ走って『Chocolate & Zucchini: Daily Adventures in a Parisian Kitchen 』というレシピ本を買った。著者Clotilde Dusoulier嬢はフランスの人。サンフランシスコに住んだこともある彼女のChocolate & Zucchiniというブログは世界的に有名で、ワタシは以前からときどき覗いていたのだ(ブログは英語。フランス語じゃなくてよかった。追記。フランス語版もちゃんとあるのですよ。いや、ロゼッタストーン頑張ってるのだよ、が、まだ文章読めるところまでは…)。この本はアマゾンでの書評もものすごくよかったし、ただレシピが書かれているだけじゃなくて、材料やテクニックについての説明や、フランスでの普通の人の普通の生活が垣間見えるようなちょっしたお話がちりばめられているところがとてもいい。「読んで楽しい」料理本なのである。

とはいうものの、今のところお茶を飲みながらぱらぱらめくるだけで、実はこの本からの料理は一品も作っていない。こんな可愛らしい女性がこんなにおいしそうなお料理を作ってしかも超美しい写真を撮って(この本の写真はすべてClotilde嬢自身が撮影)本まで出しているんだなあと思うと、自分のあまりの小ささにへこんでしまって、料理する気が萎えるのである。情けない…。

しかし、三品ほどちゃんとマークはしてあるのだ。Mがいないからと言って毎日のご飯が手抜きにならないように活を入れるためにも、この三品からまずは入ってみよう。…と、ン回目の決心をする今日のワタシであった。





食べ物関係の話のつづき。

フード・ジャーナリズムというフレーズがある。レストランのレビューやレシピ本の評論、食・飲に関するりサーチそして物書きは、ちゃんとジャーナリズムの一環として認められているのだ。ワタシはこの手の本も結構好きで、現在読んでいるのは『The United States of Arugula: The Sun Dried, Cold Pressed, Dark Roasted, Extra Virgin Story of the American Food Revolution』。ピザもスシも知らなかったアメリカという国が、現在のグルメ産業王国(グルメ王国、ではない。それはやっぱりフランスでしょう)に至るまでの、ジューシーな歴史が描かれている。

フード・ジャーナリズムというよりもっと広い意味の食文化のジャンルの本で、ワタシが一番好きなのはM. F. K. Fisher著の『The Art of Eating』。総計なんと784ページ、ハードカバーでないにもかかわらずどどん!と重い本で、持ち歩きにくいこともあって買って一年経つのにまだ読みきっていない。でもぱぱっと一気に読む本ではないのだな。彼女の書く文章はじっくり味わわないともったいない、例えば良質のワインのような言葉で綴られていて、自然と読むスピードが落ちちゃうのだ。調べたら、(多分)この本の一部が『食の美学』というタイトルでサントリー博物館文庫から日本語訳が出てる(出てた?)ようなのだが、入手しにくそうである。



いずれにせよこういう本は、やっぱりおいしいお茶を飲みながら、または夕食後LimoncelloあるいはFrangelicoなんかをちびちびやりながら、ゆっくり読むのが正しい読み方ではないかと思う。


*『French Women Don't Get Fat』というのは、ちょっと前に出版されて賛否両論で話題になった本のタイトル。詳しくはこちら
by cocopuff1212 | 2009-01-17 03:04