飾る歴史
うちのツリーにぶら下がっているオーナメントの大半は、五年前のクリスマスに大慌てで一気に購入したものである。
ハワイからヴァージニアに行ったのは2002年の秋だったが、その年のクリスマスは(このクリスマス狂のワタシが!)ツリーなしで過ごした。というのは、ヴァージニア勤務は一年半で終わるはずだったからである。
必要最低限の家財道具だけ持って行って(大半はハワイの倉庫に残して)、一年半経ったらとっととハワイに戻るはずであった。だから荷物は増やさないように努力したし、必要なものができても、ヴァージニアを発つときにあっさり処分するつもりでいたから、品質・テイストも吟味せずにかなり適当に購入していた。
ところが、ヴァージニアに移ってから二年近く経っても「ハワイに帰っていいよ」の辞令が出ない。それどころか、あと一年ほど任期が延びそうなことが発覚した。
これはこの際「仮の住まい」感覚を捨てなきゃいけないな。だったら今年はツリー買うぞと決めた。そしたら都合よくその年の十二月の初旬に、オットが四連休をとってピッツバーグの兄のところにEを連れて遊びに行きたいと言う。どうぞどうぞと送り出したワタシ。久しぶりに独身をエンジョイしながら、ツリーとオーナメント一式を買ってふたりが戻ってくるまでに飾りつけを済ませちゃうことにした。
日数が限られていたのであちこち比較ショッピングをすることもなく、何でも一軒でそろう店ということで迷わずターゲットに足を運び、高さ二メートルの人工ツリーとオーナメントをどっさり、いっぺんに購入。
このとき、オーナメントを選ぶのにじっくり一時間以上はかけたと思う。だから自分の好みでないものは一切買わなかったけれど、でも「全部いっぺんに揃えた」感がちょっと薄暗くど~んと自分の心に漂っていた。
というのも、それまであちこちのお宅で目にしたクリスマスツリーは、どこのお宅でもそこのご家族の歴史が感じられる素敵なものであったからである。年配の女性が「このオーナメントは私のおばあちゃんがね…」と言って見せてくれたアンティークのものであったり、すでに高校生になっている子供たちが小学校時代に作ったものであったり、夫婦で結婚十周年に旅行したロンドンで買ってきたものであったり。
ゆっくり何年もかけて集められた、時の厚みが感じられるコレクション。
感謝祭明けの週末に屋根裏から出すオーナメントというのは、そういうものであるべきだよね~。そう思っていたから、全部いっぺんに買ったのはなんだかずるをしたようで、ちょっとすっきりしなかった。そうだ、これから少しずつ、毎年少しずつ、うちも歴史を重ねていこう。その時ワタシはそう決心した。
それが五年前のこと。それから毎年、今度はじっくり選んだ数点のオーナメントを、ワタシはツリーに加えてきた。
とはいうものの。
子供が小さいうちは、割れるオーナメントを飾るのは怖い。うちの子が大きくなってからも、お友達がもっと小さい弟くんや妹ちゃんを連れて遊びにくるから、壊れやすいものはまだまだ飾れない。実際に一度一歳半くらいのおちびちゃんにツリーを倒されたことがあるので、繊細なガラスのものはぐっとがまん。うちのツリーに飾ってあったのは、だからずっと樹脂や金属・木なんかでできたものだった。
それで。
去年Eがキンダーに行くようになって、小さいお友達がうちに来ることが一気に減ったのに気づいたとき、「このクリスマスはチャンス!」と思ったワタシ。秋にオーナメントが店先に並ぶようになってすぐ、探しに行ったのだ、ピンとくるものを。繊細なガラスでできている、おとなのオーナメント。ツリーに点けたライトを反映して、きらきらひかるオーナメント。
ワタシがどんなにわくわくしていたか、感じ取っていただけますでしょうか。
全部おんなじになるのは嫌だったから、沢山のお店を回って、とりあえずこういう
マーキュリーグラス(写真はpotterybarn.comから拝借)やシンプルなガラスのものを、あちこちで少しずつ、合計二ダースほど買った。形や光加減が違うものをミックスしてツリーにつけたら、やっぱり光きらきらがとてもきれいである。なんだかツリーがいっぺんに盛装した感じ。ふっふっふ、うれしいぞ。
プレーンなグラスオーナメントを加えただけでも満足だったが、去年の一番のめっけものは、平和の象徴である鳩が中に入っているグラスボールのオーナメント。Pottery Barnで見つけて、普段オーナメントには絶対出さないような値段だった($12くらいだったかという記憶、ちょっと不確か)にもかかわらず、あまりの美しさに買ってしまった。鳩の体の部分は銀色、羽は透明なガラスでできている。ツリーに飾られている二百個ほど(あると思うんだ、数えたことないが)のオーナメントの中で、今、これがワタシの一番のお気に入り。
もうひとつ、ついでだからもうちょっと贅沢しようとこれもPottery Barnで一緒に買ったのが、おなじくガラスでできたトナカイのオーナメント。これは裏側に『2007』と刻印が入っている。年号がはいっているものは、いかにも「時を刻む」感じがしてロマンチック。これを、はじめておとなのオーナメントを買った年の記念にしようと思った。
今年買ったのはガラスの松ぼっくり。これはツリーには飾ってないんだけど、コレクションへの今年の追加はこれ。
そのうち本当に素敵なアンティークのものを手に入れることができたらいいなぁ。と夢見る夢子さんのワタシである。
by cocopuff1212
| 2008-12-07 23:40