PH4.4-7

コロラド・パート5

今回出掛けたコロラドで、気がかりなことを耳にした。パインビートルという虫が、恐ろしいスピードで針葉樹森を食い尽くしているそうなのだ。

全長五ミリくらいのこの虫は、樹液をえさにすることと樹皮を通して内側に卵を産みつけることで、樹木に致命的なダメージを与える。ターゲットは主に松の木(よってパインビートルという名前)。

本来ならばバランスのとれた自然のサイクルというものが存在して、暖かい時期パインビートルによって森林がある程度ダメージを受けても、冬の寒さに耐えることができなかった虫が死に絶えて針葉樹に回復期間を与えていた。それが、ここのところ地球の温暖化で虫が冬の間も死ぬことなく活動を続けるため、森がとんでもない速さでどんどん食い倒されているという。

たとえば、ロッジの部屋からみた景色。生命をからからに吸いとられて茶色くなってしまった松の木が痛々しくて哀れである。そして本当なら深い緑の衣を身に着けているはずの山も、全体がすっかり赤茶色になってしまっている。

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デンバーに着いてすぐMがパインビートルの話をしてくれたのだが、空港からホテルへ向かう道程でも、ダメージをうけて茶色くなってしまい切り倒される運命を待つのみの松の木を沢山見た。デンバー近郊からWinter Parkへの道でみた山々も、もしかすると半分以上は取り返しのつかないダメージを受けているのではないかと思うほど、茶色く枯れてしまってどう見てもどう考えても悲しく恐ろしい風景だった。

死んでしまった松の木は、切り取るしか手段がない。倒れてきたら危険だし、切り取って処分すれば近くの木に虫が移動するのをある程度防ぐことができるからだ。今回泊まったロッジに2006年の12月にも来ているMは、「2年前はもっときれいな松の木でいっぱいだったのに…」とショックを隠せないようだった。

パインビートル大発生の原因が地球の温暖化であることは、休暇の最終日に立ち寄ったRocky Mountain National Parkの標高3000メートル以上という寒い場所を通っていたとき、周囲の針葉樹林にほとんどダメージが見られなかったことでも納得できる。あそこまで高い場所だと、パインビートルは冬の寒さを耐えて生き延びることができないのだ。

パインビートル現象については「pine beetle outbreak」でインターネット検索するとかなりのヒット数があり、どの地域でどの程度の被害がみられるか、森林省がどういう対策をとっているのかなどを詳しく読むことができる。パインビートルが問題なのはコロラド州に限ったことではなく、森林公園でみた地図では西海岸は北カリフォルニアからワシントン州、さらにカナダのブリティッシュコロンビア地域にまで大幅にダメージが広がっていることを知らされた。これはまさにグローバルな危機なのだ。

今回ちょっとリサーチして読んだ中で一番恐ろしいと思った記事はこれ。大発生した虫に命をうばわれて腐敗・分解していく過程で、樹木は二酸化炭素を空気中に吐き出す。この記事によると、ブリティッシュコロンビアではパインビートル現象の進み方があまりにも速いため、2020年までには松樹林が光合成で生産する酸素よりも倒れていく樹林の放出する二酸化炭素の方が量を上回ると予測される、と言うのである。



えッ!? 



そりゃあ松以外にも木はあって、パインビートルは主に松しか攻撃しないから、地球の酸素があと15年以内になくなってしまうとか、そういうことでないのは分かるよ、うん。でも、でも、ちょっとぞぞっとする怖~い話ではないか。

もうひとつ怖いと思ったのは、今回コロラドに遊びにくるまで、ワタシはパインビートル大発生問題のことを全く知らなかったことである。これってもっと全国的なレベルで心配するべき問題として報道されてていいんじゃないの?それともワタシが時事ニュースに疎いだけか?



グローバルウォーミングに関しては、ひとりひとりでできることは限られていて、ワタシひとりが頑張ったって…と思ってしまいがちである。だけど、ひとりひとりが努力しないと、近い将来に、地球上の山々から松の木が消え去ってしまうかもしれないのである。生のクリスマスツリーが飾れなくなっちゃうかもしれないのである(…ってそんな問題じゃないんだけど)。



ゆっくり休んでへらへら遊ぶつもりだった休暇で、ワタシはものすごぉーく大きな宿題を課されたような気がした。

ワタシというひとりの人間にできることは何か?

用事がいくつもあって車で外出するときは、ガソリンの無駄がないように一番効率のいいルートをちゃんと考えてから出掛けるとか、リサイクルできるものは出先から持ち帰ってでも必ずリサイクルするとか、すでに心がけていることは沢山ある。だけどもっと他にもできることはあるはず。もっと色々調べてみよう。今の生活も、どこでどうやってもっと無駄を省けるか、よーく考えてみよう。

小さなことでも意味がある。ワタシという存在はウン億分の一にしかすぎないかもしれないけれど、ワタシがいなければ人数はウン億マイナスいち、なんだもん。

そしてその努力の積み重ねを毎日意識して貯めていこう。


Eがおとなになってコロラドの山を登る時に、そして彼がいつか自分の子供を連れてオレゴンの森林公園を訪ねる時に、松樹林が「過去のお話」になってしまわないように。


次の世代に、そしてその次の世代に、大事な遺産を残していけるように。
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by cocopuff1212 | 2008-06-27 12:55